こんにちは。司法書士の松崎充知生(まつさき)です。
今回は、抵当権(根抵当権)設定登記の取扱店の表示 についての記事です。
以下、見ていきます。
抵当権(根抵当権)設定の中に、銀行等の取扱店の記載はできる?
銀行等の金融機関で住宅ローンを組んだり、事業資金の融資を受ける際、所有する不動産に抵当権や根抵当権を設定するのですが、不動産登記上では、その抵当権(根抵当権)の登記について、窓口となった「取扱店名」を登記簿に記載することができるかどうかという問題があります。
抵当権(根抵当権)設定の登記がなされると、登記簿上にはその権利者として、本店(金融機関の本部所在地)、商号(金融機関の名前)が記載されます。
すると、この抵当権(根抵当権)について何か連絡事項がある場合、全ての連絡、書面送付が本店に集中してしまい、どこの支店窓口で手続をしたものかを探していくことになります。
この手続の煩わしさを解消する為に、主に銀行に対して登記簿上に本店、商号に加えて「取扱店」の記載が認められるようになりました。
金融機関から融資を受けた個人の方は、登記した抵当権(根抵当権)について完済をしたい等の事情がある場合、当時、どこの支店で手続を行ったか覚えていれば、その支店に問い合わせて完済手続を進めることができます。
しかし、数年経って窓口支店を忘れてしまった、融資を受けた人が亡くなりその相続人が手続を行う場合、登記簿上に取扱店名の記載が無ければ、その抵当権(根抵当権)者である金融機関の本店に問い合わせて当時の支店を一から調べてもらう必要があり、これには時間を要します。
そこで抵当権(根抵当権)を設定した当時から、あらかじめ取扱店名を登記簿上に記載しておくことができれば、将来その抵当権(根抵当権)を外してもらうのに、スムーズに手続を進めることができるので安心です。
では、どのような場合に取扱店の記載ができるでしょうか。
取扱店の記載ができる金融機関
原則として、支店等を設置して全国展開をしている金融機関に取扱店の記載が認められています。
以下のものが、取扱店の記載のできる金融機関です。
銀行(メガバンク、地方銀行)
記載例:(取扱店 ○○支店)(取扱店 ○○営業部)(取扱店 ○○住宅ローンセンター)
この記載で登記されているケースが多いです。
(取扱店 本店営業部)の記載は不可です。
これは登記研究第391号109頁で、外観的には本店内部の組織として前記の通知事務等に不便を来すことはあり得ないことから、便宜的措置を認める必要はないからとされています。
融資を受ける際、銀行が窓口になりますが、実際の融資審査は保証会社が行っていることがあります。この場合、抵当権者(根抵当権者)は〇〇信用保証株式会社になります。
信用保証株式会社は銀行の関連会社ではありますが、「金融機関ではない」とされているため、取扱店の記載は不可です。
銀行で住宅ローンを組む場合は、信用保証株式会社が抵当権者となっていることが多いですが、三菱UFJ銀行のように銀行が直接抵当権者になることもありますので、抵当権設定契約書で当事者を確認していく必要があります。
信用金庫・信用組合・信用保証協会
記載例:(取扱店 ○○支店)
以前は、取扱店の記載を認めていませんでしたが、銀行と同様に全国規模で支店があるという背景から、以下の登記研究で取扱店の記載を認められるようになりました。
これを見ると、少し細かくなりますが、信用保証株式会社は取扱店の記載ができないのに対し、信用保証協会は記載ができるということですね。
最近は取扱店を記載して登記をする信用金庫も増えてきましたが、取扱店に変更が生じたことによる変更登記の必要性や事務手続きの円滑性を考慮し、あえて取扱店を記載をしないで登記をするところもあります。
登記申請の際に取扱店を記載するのかどうかを司法書士が信用金庫担当者と事前打合わせをしているのが一般的です。
独立行政法人住宅金融支援機構
記載例:(取扱店 株式会社◯◯銀行◯◯支店)
住宅ローンでフラット35を利用する場合に、窓口となった銀行を取扱店として記載することができます。
銀行のケースと同様、(取扱店 〇〇銀行本店営業部)は不可です。
また、アルヒ株式会社、株式会社クレディセゾン、オリックス・クレジット株式会社、株式会社ファミリーライフサービス等のノンバンクを取扱店とする記載は不可 です。
試験的に(取扱店 ノンバンク名)を入れて登記申請してみたことがありましたが、法務局から記載できないとして補正対応となってしまいました。
このようにノンバンクは取扱店が登記されないので、完済時に当時の取扱店を調べる場合は、登記簿謄本内にある登記原因を見てみましょう。
原因:令和 年 月 日債権譲渡(原契約同日金銭消費貸借・譲渡人●●)にかかる債権の同日設定
通常、●●部分がノンバンクである為、融資当時の取扱店であったことが推認できます。
労働金庫・株式会社日本政策金融公庫・独立行政法人福祉医療機構
記載例:(取扱店 ○○支店)
上記3機関も(取扱店 〇〇支店)としてを記載することが認められています。
信用金庫と同様、労働金庫も取扱店を記載して登記するケースが多いですね。
登記申請の細かなルール
これらは添付書面となる登記原因証明情報、または委任状に取扱店を記載して申請することができます。
また、後から他の不動産に追加で抵当権設定をする場合、1件目に記載した取扱店とは異なる他の取扱店で登記申請をすることができます。
抵当権(根抵当権)設定登記をした当時は取扱店を記載していなかったが、後から取扱店を追加する登記もできますし、後から取扱店を抹消する登記もできます。
これは 金融機関の単独申請によって行えますが、登録免許税が不動産1個につき1000円かかってくるので、設定登記時に一緒に記載しておくケースがほとんどです。
まとめ
いかがでしたか。取扱店の記載ができるものは以下の金融機関です。
- 銀行(メガバンク、地方銀行)
- 信用金庫・信用組合・信用保証協会
- 独立行政法人住宅金融支援機構
- 労働金庫
- 株式会社日本政策金融公庫
- 独立行政法人福祉医療機構
抵当権設定登記の申請をする時に、金融機関、法務局に取扱店の記載についてどうするのか実務上、よく聞かれるので、今回まとめてみました。
取扱店の記載についてはこれまで多くの先例、登記研究が出ており、以前は認められなかったものが、一転して認められることもあるため、その都度新しい事例があるかを確認していく必要があります。
ご参考にしていただければと思います。
今回はここまでです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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