成年被後見人の不動産売却に必要なものは?

不動産登記

こんにちは。司法書士・行政書士の松崎充知生(まつさき)です。

今年度もようやく確定申告の時期が終わりました。昨年、不動産贈与をしたお客様全員に確定申告手続の準備をされているかどうか再確認を行い、無事に皆さん手続を終えたようで、私も今一息です。

今回は 成年被後見人の不動産売却における必要書類 について解説いたします。

認知症の方や知的障害のある方など意思疎通が十分にできない親族の為に、家庭裁判所の手続きを経て成年後見人になった方もいらっしゃると思います。

成年後見人はその親族(成年被後見人)に代わって、成年被後見人名義の不動産を売却することができます。

所有者本人が不動産売却をする場合と比べて、必要書類が増えますので注意が必要です。

以下見ていきます。

成年被後見人の不動産売却する時の署名方法

成年被後見人所有の不動産を売却する際、不動産売買契約書や不動産業者に売却を依頼する媒介契約書に署名をすることになりますが、これは不動産所有者本人ではなく、成年後見人が署名捺印をすることになります。

書き方としては以下の通りです。(成年被後見人鈴木一郎、成年後見人佐藤次郎のケース)

売主 住所 埼玉県春日部市〇〇一丁目〇番〇号
         氏名 鈴木一郎
                  鈴木一郎成年後見人
                  鹿児島県鹿児島市〇〇一丁目〇番〇号
                  佐藤次郎  ㊞
※印鑑は佐藤次郎のものを捺印します。鈴木一郎の印鑑は不要です。

少し長いですが、この赤い字を全て署名します。

本人が署名をしたり、成年後見開始の審判を受けていない状態で親族が勝手に署名をしても、契約書としては無効または取消の対象となります。

この署名をする前の段階で販売担当の不動産会社から、後述する後見開始の審判書正本(謄本)と確定証明書または成年後見登記事項証明書を提出するように求められますので、あらかじめ準備をしておきましょう。

成年被後見人の不動産売却に必要な書類

成年被後見人名義の不動産売却に必要な書類は以下の通りです。

  • 成年後見人の実印
  • 成年後見人の印鑑証明書(発行から3か月以内のもの)
  • 権利証(登記済証または登記識別情報)
  • 売却する不動産の評価証明書
  • 後見開始の審判書正本(謄本)と確定証明書 または成年後見登記事項証明書(発行から3か月以内のもの)
  • (居住用不動産を売却する場合) 家庭裁判所の売却許可決定書
  • (成年後見人が弁護士または司法書士の場合) 弁護士会・司法書士会発行の登録事項証明書
  • (後見監督人がいる場合) 後見監督人の同意書と印鑑証明書

こんなにあります。特に注意するべき点を以下見ていきます。

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後見開始の審判書と成年後見登記事項証明書

後見開始の審判書正本(謄本)確定証明書は、この2つがそろって1セットです。

家庭裁判所で後見開始の審判がなされ、成年後見人の住所に審判書が到達してから2週間を経過すると審判が確定したことになり、そこで初めて成年後見人になったことになります。審判を行った家庭裁判所で改めて確定証明書を取得する必要があり、後見開始の審判書正本(謄本)のみでは足りませんのでご注意下さい。

成年後見登記事項証明書とは、法務局で発行される後見開始の審判の内容が記載されたものです。成年後見登記事項証明書が取得できれば、後見開始の審判書正本(謄本)と確定証明書は不要です。(同じ内容が書かれているからです。)

家庭裁判所で審判がなされた後すぐに法務局へ行っても成年後見登記事項証明書は取得できません。法務局が成年後見登記の事務処理をする関係上、発行には多少時間がかかります。不動産の引渡しをする時期によって以下のように使い分けると良いでしょう。

審判から3か月以内  → 後見開始の審判書正本(謄本)と確定証明書

審判から3か月経過後 → 成年後見登記事項証明書

有効期限がそれぞれ3か月以内のものが必要となります。

 

家庭裁判所の売却許可決定書

成年後見人が成年被後見人名義の居住用の不動産を売却するには家庭裁判所の許可が必要です。これには民法に規定があります。

第八百五十九条の三(成年被後見人の居住用不動産の処分についての許可)
成年後見人は、成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物又はその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。

e-Gov法令検索 民法より引用

居住用不動産とは、成年被後見人が過去居住していた、現在居住している、将来居住する予定の建物及びその敷地のことを指します。成年後見人が現在居住している場合はもちろん該当しますが、施設や病院に移ったが、今まで居住していた場合、体調が回復し今後居住用として住む予定のある場合にも該当します。居住用不動産を家庭裁判所の許可無く売却しても、無効となります。

一方、他の方に賃貸中のアパートや戸建、別荘、農地、山林等については居住用不動産に該当しないため、家庭裁判所の許可は不要です。しかし、成年被後見人の大きな財産を処分することには変わりないので、家庭裁判所には事前に相談はしておいたほうが良いです。

家庭裁判所の売却許可の判断基準は、主に売却の必要性、売却条件の相当性をもとに決められます。許可が下りるまで申立て後約3週間~1か月ほどかかるので、お早めに申し立てをすることをお勧めします。

家庭裁判所に提出する書類は以下の通りです。

  • 居住用不動産の売却許可申立書
  • 売却する不動産の登記簿謄本
  • 不動産売買契約書(案)のコピー
  • 売却する不動産の売却査定書
  • 売却する不動産の評価証明書

※その他、家庭裁判所で個別に書類を求められることがあります。

手続が終わると、家庭裁判所から家庭裁判所の売却許可決定書が発行されます。売却許可は不服申し立て制度は無い為、この決定についての確定証明書はそもそもありません。

家庭裁判所の売却許可決定書が用意できれば、権利証(登記済証または登記識別情報)の用意は不要となりますが、お手元に権利証がある場合は登記対象の不動産を再確認するために、念のため用意しておいたほうが良いです。

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【経験談】居住用財産の売却許可の申立てのタイミング 

この家庭裁判所の許可は、①許可申立て→不動産売買契約を締結するケースと、②不動産売買契約を締結後→許可申立てをするケースがあります。これは不動産会社によって進め方が変わってきますので、事前に確認をしましょう。

私が不動産営業マン時代の頃は、②のケースで進めていました。このようにしておかないと、売主様買主様がともに売買契約が締結できるかどうか不安定な状態が1か月ほど続くことになります。そうこうしているうちに、せっかく購入を決めた買主様がほかの物件に目が移り、やっぱり買うのをやめる、売主がやっぱりもっと好条件で買ってくれる人を探すといったことになってしまうからです。先行して許可申立てをした後に売買契約予定をやめるとなると、申立てをした許可手続は取り下げをせざるを得なくなります。先に売買契約を締結しておくと、相手方が確定し、契約上の責任が伴いますので、それに向けて売主様買主様がお互いに準備をするようになります。

2のケースで進める場合、不動産売買契約書には停止条件を付けておくことが必要になります。

停止条件の内容は以下の通りです。

【成年後見人居住用不動産の売却許可による解除】
売主〇〇は成年被後見人であり、〇〇は□□家庭裁判所□□支部より成年後見人としての選任を受けております。〇〇は法定代理人として〇〇所有不動産の所有権移転につき、家庭裁判所から「居住用不動産の売却許可」を受けた後、買主に所有権移転登記を行いますが、万が一、お引渡日までに「居住用不動産の売却許可」が得られず、買主に所有権移転が出来ないことが判明した場合、売主は買主に対して受領済みの金員を無利息にて速やかに返還し売買契約を解除できるものとします。

 

家庭裁判所の許可決定は絶対通るわけではありませんので、許可が下りなかった場合の取り決めです。不動産売買契約書にこの停止条件を付けておくことでトラブルを回避することができます。

 

印鑑証明書

成年後見人が個人の場合は市町村で発行される印鑑証明書を用意すれば足りるのですが、成年後見人が弁護士や司法書士である場合は注意が必要です。

弁護士や司法書士の市町村発行の印鑑証明書には自宅住所が記載されていますが、後見開始の審判書正本(謄本)や後見登記事項証明書に記載されている成年後見人の住所が事務所所在地になっている場合は、市町村発行の印鑑証明書のみでは足りません。 

このように成年後見人の住所が一致しない場合、成年後見人が所属する弁護士会や司法書士会に対して、登録項証明書(事務所住所と自宅住所の記載があるもの)を取得していただくことになります。この取得ができれば市町村発行の印鑑証明書、後見登記事項証明書(または後見開始の審判書正本(謄本))、登録事項証明書の3点をもって、成年後見人の同一性が証明できることになります。

また、平成30年1月1日から、弁護士や司法書士が成年後見人となって家庭裁判所に印鑑を届け出た場合、裁判所書記官による成年後見人の印鑑証明書の発行が行われることになりました。

この印鑑証明書には弁護士、司法書士の事務所所在地が記載されておりますので、裁判所書記官発行の印鑑証明書、後見登記事項証明書(または後見開始の審判書正本(謄本))の2点をもって、成年後見人の同一性が証明できることになります。

以上のいずれかの用意が必要です。なお、弁護士会、司法書士会が発行する職印証明書は使えませんのでご注意下さい。

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後見監督人の同意書と印鑑証明書

後見開始の審判がなされる時、成年後見人のほかに、後見監督人が選任されていることがあります。後見監督人には弁護士、司法書士、社会福祉士等の専門職が選ばれており、後見開始の審判書正本(謄本)または成年後見登記事項証明書の内容に記載されています。

後見監督人がいる場合は同意を得ておく必要があり、民法にも規定があります。

第八百六十四条(後見監督人の同意を要する行為)

後見人が、被後見人に代わって営業若しくは第十三条第一項各号に掲げる行為をし、又は未成年被後見人がこれをすることに同意するには、後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。ただし、同項第一号に掲げる元本の領収については、この限りでない。

第十三条(保佐人の同意を要する行為等)
被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。

(略)

 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。

e-Gov法令検索 民法より引用

買主が見つかったら成年後見監督人から同意書その方の印鑑証明書も取得しておきましょう。印鑑証明書は前述の通り、印鑑証明書記載の住所と、後見開始の審判書正本(謄本)または成年後見登記事項証明書記載の住所が一致しない場合は同一性を証明するための書類が必要になりますので、ご用意下さい。家庭裁判所からこれらの書面の提出を追加で求められることがあるため、居住用不動産の売却許可申立てを行う に取得しておくと良いですね。

ちなみに、成年後見人が成年後見監督人から同意を得ないで売却をした場合、その不動産売買契約について成年後見監督人が取消しをすることができてしまいます。

第八百六十五条 後見人が、前条の規定に違反してし又は同意を与えた行為は、被後見人又は後見人が取り消すことができる。この場合においては、第二十条の規定を準用する。
2 前項の規定は、第百二十一条から第百二十六条までの規定の適用を妨げない。
 
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最後に

いかがでしたか。成年被後見人名義の不動産を売却するとなると、こんなに必要書類があります。普段見慣れない書類がほとんどだと思いますが、不動産会社や司法書士にご相談いただければサポートがしていただけますので、一つずつご準備をしていただければと思います。ご不明点等ございましたらコメント欄、お問い合わせからお気軽にご相談下さい。

今回はここまでです。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。

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