会社の登記内容に間違いが発覚!そんな時の対処法

商業登記

みなさん、こんにちは。司法書士の松崎充知生(まつさき)です。

今回は 会社の登記内容に間違いが発覚した場合の対処法 についての記事になります。

法務局に会社の登記申請をして、その登記完了日に会社謄本を取ってみたところ、
記載内容に 間違いが発覚

 
このような場合、どのようにしたらよいでしょうか。

本来はこういったミスが無いように登記申請をする前に記載内容をあらかじめ確認しておくべきですが、焦って申請してしまうと、こういったケースをよく見かけますので、以下見ていきます。

 

間違いやすいケース

 会社の登記で間違えてしまうものとして考えられる例は以下のものがあります。

  • 商号(会社名)
  • 本店(住所)
  • 取締役、代表取締役の住所や氏名
  • 資本金の額  等

 特にワタナベさんの「ナベ(辺、邊、邉)」や、サイトウさんの「サイ(斉、斎、齋、齊)」の字は種類が多くありますので、よく見ておく必要が出てきますね。

 

まずは申請書、添付書面を確認する

まずは、法務局に提出した当時の申請書、添付書面を確認し、最新の登記簿謄本と見比べてみます。
間違いの原因が自分にある場合は、更正登記を申請します

当時の申請書、添付書面を見ても記載に間違いがない場合、申請をした法務局に問い合わせをしましょう。法務局の登記処理の過程でミスがあったことが考えられます。

間違いの原因が法務局にある場合、法務局が職権で更正登記をしてくれます。

こちらで更正登記の申請をする必要はありません。

商業登記法 第132条(更正)
登記に錯誤又は遺漏があるときは、当事者は、その登記の更正を申請することができる。

 更正の申請書には、錯誤又は遺漏があることを証する書面を添付しなければならない。ただし、氏、名又は住所の更正については、この限りでない。

e-Gov法令検索 商業登記法より引用

商業登記法 第133条 登記官は、登記に錯誤又は遺漏があることを発見したときは、遅滞なく、登記をした者にその旨を通知しなければならない。ただし、その錯誤又は遺漏が登記官の過誤によるものであるときは、この限りでない。

 前項ただし書の場合においては、登記官は、遅滞なく、監督法務局又は地方法務局の長の許可を得て、登記の更正をしなければならない。

e-Gov法令検索 商業登記法より引用

 

 

更正登記の申請書を作成する

以下の申請書を作成します。

今回は本店の記載を更正するケースで見ていきます。
黄色マーカー部分更正前の本店水色マーカー部分が更正後の本店(正しい記載)をそれぞれ記載します。

 

委任状の他に添付する書面は「錯誤、遺漏があることを証する書面」です。
具体的には 上申書と、その他、記載ミスがあった 株主総会議事録、取締役会議事録(取締役の決定書)等の正しい記載に作成し直して改めて押印したものを用意します。
上記のケースでは上申書、取締役会議事録を添付しています。

【参考先例】(平成19年12月3日付け民商第2586号) 資本金の額の更正のケース
更正登記の申請書には、申請書及び添付書面が錯誤により作成されたことを証する会社代表者(印鑑届出人に限る。)の上申書及び錯誤により作成された添付書面に代え新たに作成された添付書面が添付されていれば、……受理して差し支えない。

また、以下の場合は錯誤、遺漏があることを証する書面の添付は不要とされています。

  • 氏名・住所の更正をする場合(商業登記法第132条但書)
  • 誤ってなされた登記の申請書または添付書類により更正原因が明らかであるとき 
    (商業登記規則第98条)

第九十八条(更正の申請書の添付書面)
登記に錯誤又は遺漏があることがその登記の申請書又は添付書類により明らかであるときは、更正の申請書には、錯誤又は遺漏があることを証する書面を添付することを要しない。この場合には、更正の申請書にその旨を記載しなければならない。

e-Gov法令検索 商業登記規則より引用

申請書、添付書類により更正原因が明らかといえるか、自分で判断がつかないこともあると思います。
更正登記は、法務局によって添付する書面の取り扱いが異なりますので、事前に問い合わせして確認しておきましょう。

上申書の記載例は以下の通りです。

更正登記できない場合がある

会社の登記内容に間違いがあった場合でも更正登記ができない場合があります。

取締役や代表取締役等の就任日を間違えた場合は注意が必要です。

取締役Aが「令和6年5月13日就任」した旨を、令和6年5月14日付けで登記申請をした後、取締役Aについて「令和6年5月15日就任」 に更正することはできません。

なぜなら、登記申請をした令和6年5月14日時点では、取締役Aが就任した事実が存在していないからです。

この場合は一度、就任登記を抹消させてから、改めて就任登記を申請する必要があります。

また、取締役A,B,Cと監査役Dの就任登記をするつもりが、取締役A,B,Cのみ登記申請して、監査役Dの登記申請を忘れていた場合も、更正登記はできません。

改めて監査役Dの登記申請をすれば良いからです。

資本金の額を200万円と登記申請するつもりが、間違えて2000万円と登記申請した場合
(実際の額よりも多い額で登記申請した場合)、更正登記は可能です。

しかし、2000万円と登記申請するつもりが、間違えて200万円と登記申請した場合
(実際の額よりも少ない額で登記申請した場合)、更正登記はできません。
この場合は、抹消登記(登録免許税2万円)と変更登記(正しい資本金の額から抹消前の資本金の額を差し引いた額の1000分の7の額(3万円に満たない場合は3万円)をすることになります。

このように事例によって更正登記ができるか判断がつかない場合は、法務局に事前に相談をしておきましょう。

最後に

以上、会社の更正登記についてでした。

ご覧の通り、間違った記載を訂正するために費用と時間がかかります。

また、更正登記が完了したとしても会社の謄本には更正前の記載履歴が残ってしまいます。

登記申請をする前にあらかじめ内容を確認しておきたいところですね。

今回はここまでです。最後までお読みいただきましてありがとうございました。

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プロフィール
ブログ管理者
まつさき

埼玉県を拠点とする司法書士・行政書士・宅地建物取引士
鹿児島県出身。9年間、不動産売買仲介の営業職に従事。
契約実績累計400件超を経験し、マンション業界への社外出向を経て、士業へ転身。元競技ダンサー。
休日はアウトドアや観光スポットへよく行きます。
主に不動産売買、相続手続、会社に関する法律情報を発信していきます。

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