取締役と代表取締役を同時に辞める場合、辞任?退任?

商業登記

皆さん、こんにちは。司法書士の松崎充知生(まつさき)です。

 

取締役兼代表取締役が双方の役職を同時に辞めた場合 についての論点が出てきたので、今回の話題にしていきます。

 

会社の取締役が辞任をする場合、辞任届を法務局へ提出して「年月日辞任」で登記されます。

では、その取締役がその会社の代表取締役でもある場合、双方の役職を辞任したら、
どういう登記原因になるでしょうか。

 

この場合、辞任届の記載の内容によって登記原因が変わってきます。

辞任届に「取締役を辞任する」旨を記載した場合、取締役は「年月日辞任」、
代表取締役は取締役の資格を失うことになるので「年月日退任」で登記されます。

これはよくある登記申請内容ですね。

  

ところが、今回、依頼者様から取締役も代表取締役どちらも「辞任」にできないか?
というご要望をいただきました。

  

 

実はこれも……可能です。

この登記を実現させるには、本来なら「代表取締役を辞任する」旨の辞任届を用意して辞任、平取締役になった後「取締役を辞任する」旨の辞任届を用意して辞任する登記をまとめて申請することになるのですが、段階を踏んでわざわざ辞任届を2通用意することもなく、

1枚の辞任届に「取締役及び代表取締役を辞任する」旨を記載して登記申請した場合、
取締役も「年月日辞任」、代表取締役も「年月日辞任」で登記がなされます。

 

 

これまでは、「取締役→辞任、代表取締役→退任」で登記申請するケースがメインになっていますが、文言によって意味が変わってくるので使い分けが必要ですね。

辞任・・・任期期間中にその人の意思によって辞めること

退任・・・任期が満了したことによって辞めること

解任・・・任期期間中にその人の意思によらずに辞めさせられること

 

辞任届の記載例(取締役及び代表取締役の辞任用)はこちら↓↓

 

印鑑について注意が必要です。

法務局に印鑑を届出している者が以下の辞任の登記申請をするときは、
辞任届に個人の実印を押印する+その印鑑証明書(有効期限無し)を添付するか、
会社届出印(印鑑証明書は不要)を押印する必要があります。(商業登記規則第61条第8項)

  • 代表取締役のみを辞任する場合
  • 代表執行役のみを辞任する場合
  • 代表取締役兼取締役が両方の役職の辞任する場合
  • 代表執行役兼執行役が両方の役職を辞任する場合

法務局に印鑑を提出している者がいない場合に、代表取締役が上記の辞任するときは、
その辞任届に個人の実印の押印とその印鑑証明書(有効期限無し)の添付は必須になります。

なお、代表取締役が複数いて、その誰かが法務局に印鑑を届出をしている会社のうち、印鑑届出をしていない代表取締役が上記の辞任する場合には、個人の認印で足りるとされています。

「その他の取締役・監査役」の辞任届は、個人の認印で足ります。(押印が無くても辞任登記の申請は受理される取扱いです。)

しかし、実際は重要な役員の資格を失ってしまうわけですから、できるだけ個人の実印を押印(+印鑑証明書の提出)をしていただくことが今後のトラブル防止に繋がると思います。

今回はここまでです。最後までお読みいただきありがとうございました。

ではまた(^^

 

 

【近況↓↓】

新年度が明けましたね。令和5年度の評価証明書を取得しに市役所へ向かったところ、受付番号が尋常ではない数字に。(いつもは30番台、40番台で呼ばれるのですが・・)
資産税課はすごく混んでいましたが、何とか評価証明書を揃えられたので良いスタートダッシュが切れそうです。

1社目の司法書士法人では、私の商業登記の取扱いは年間わずか4件(相続がメインでした)だったのですが、現在所属している司法書士事務所では、入所してから毎日、商業登記の業務に取り組んでおり、日々勉強になっています。引き続き経験を積んでいきます。

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プロフィール
ブログ管理者
まつさき

埼玉県を拠点とする司法書士・行政書士・宅地建物取引士
鹿児島県出身。9年間、不動産売買仲介の営業職に従事。
契約実績累計400件超を経験し、マンション業界への社外出向を経て、士業へ転身。元競技ダンサー。
休日はアウトドアや観光スポットへよく行きます。
主に不動産売買、相続手続、会社に関する法律情報を発信していきます。

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