不動産決済手続での着金確認の大切さ

不動産登記

みなさん、こんにちは。司法書士・行政書士の松崎充知生(まつさき)です。

 

不動産の取引の中で一番最後に行われるのが、決済手続(引渡し手続)

これから振込手続をする銀行に売主様、買主様、不動産仲介会社、司法書士の4者が集まり、司法書士による売主様買主様の意思確認、必要な書類確認後、買主様が売主様口座に振込み、銀行員が振込伝票と出金分の現金を持参してきたら売主様から買主様へ領収書発行と鍵の引渡しを行うというものです。

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とにかく銀行での振込処理の時間が長い・・・。

出金伝票と振込伝票を銀行員にお渡しし、振込処理まで早くて30分、遅くとも1時間ほどその場で待機することになります。(※都内の銀行ではもっとかかることもあります。)

待機時間があまりにも長いので銀行員が処理された伝票を持ってきたら、緊張から解放されて、その場をすぐ解散したくなると思うのですが、ここで気が抜けないのが 着金確認 です。

売主様が売買代金が自分の銀行口座に入金されているか気になるところですし、司法書士も売買対象の不動産に売主様の抵当権や差押登記がされている場合はその場で着金確認をしておかないと、関連機関からこれらを抹消する書類を受け取ることができない可能性が出てきます。

決済手続上の役割は変わりましたが、私もかれこれ11年ほど、色んな不動産取引の立会いをさせていただきました。

今回は、決済手続での着金確認に関することを経験談を踏まえながら書いていきます。

 

振込時に「至急扱い」の対応を依頼する

銀行の振込処理には、銀行内のセンターを経由して振込先金融機関に送金されるものと、その振込支店からセンターを経由せずに直接、振込先金融機関に送金されるものがあります。

センターを経由しての振込みになると振込自体はできても着金確認に1~2時間程かかってきます。

決済手続の場で迅速に着金確認ができるようにするためには振込処理を「至急扱い(センター経由無し)」にしてもらう必要があります。

司法書士としては登記必要書類が揃ったタイミングで振込伝票等をお渡しする銀行員に対し、「至急扱いでお願いします」とお声掛けして念押ししておくことが大切です。

  

着金確認の方法

着金確認の方法は色々ありますが、最近では銀行のネットバンキングも普及してきているので、買主様による振込みがあった場合は売主様にその場でスマホから残高画面を確認をしていただいています。

ネットバンキングのアプリを持っていない場合は、近くの銀行で通帳記帳やコンビニATMで残高確認をしていただきます。

近くに振込先の銀行やコンビニがない場合は売主様に振込伝票(銀行の受領印があるもの)のコピーをお渡しして、その日中に確認いただくよう促します。

抵当権や差押登記がある不動産の場合は、司法書士がその場で完済先金融機関に電話を入れて着金確認を行います。

この場合は特に注意を払う必要があるので、基本的にこの着金確認まで完了してから決済手続の場を解散することになります。

振込処理が完了すると、銀行員が受領印が押された伝票一式を持ってきます。

銀行から発行された書類である以上、振込みが問題なくできていると思いがちが、ここで着金確認をせずに解散してしまうとどういうことになりそうでしょうか。

抵当権等の抹消するべきものがある前提になりますが、経験談を踏まえながら書いていきます。↓↓

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着金確認をしない場合の危険性

完済に必要な金額の引落しができない

銀行による振込処理が完了した後、司法書士が完済先の金融機関に電話を入れて着金確認を行いますが、完済するために必要な金額がその銀行口座の中に入っておらず、引落しができないということがあります。

例えば、住宅ローンの残債が1000万円で、不動産の売買金額が900万円である場合、売主様の銀行口座にあらかじめ100万円以上の入金がされていないと、完済先の金融機関が引落しすることができません。

この場合は売主様に改めて入金をしていただき、その上で再度着金確認を行います。

上記の例のように残債割れで不動産売買がされるケースはそこまで多くありませんが、引落しするのに数千円、数百円足りなかったというケースは結構あります。

不動産決済手続に入る前にあらかじめ残債がいくら残っているのか、抵当権の抹消書類を受け取るためにはいくら必要なのかを確認しておくべきでしょう。

 

売主様の振込先が完済先金融機関以外のものだった

売主様が複数の銀行口座を持っている場合は、売買代金の振込先に注意が必要です。

抵当権等の完済するべきものが何も無い場合は、売買代金の振込先はどこの金融機関でも良いですが、完済するものがある場合は、売買代金の振込先は「売主様が開設した完済先の金融機関の銀行口座」です。

これまでに決済手続を何件も経験されている不動産会社にとってはごく当たり前のことですが、たまに完済先ではない金融機関で振込伝票を準備していることがあります。

この状態で振込をすると、当然ながら完済先の金融機関で着金確認ができません。

売主様が受け取った銀行口座から改めて完済先金融機関に振込みをしていただくという過程が必要になってきます。

振込手数料も別途かかりますし、完済先の銀行口座に振込みされるまで時間も更にかかります。

過去に売買代金の振込先が「完済先金融機関ではない振込先」になっていたことがあり、銀行員に伝票一式が渡る直前に止めたことがあったので、これ以降、私も決済手続の場では作成された振込伝票を見て振込先の内容を確認するようにしています。

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金融機関「ご本人様でないとお答えできません」

完済先の金融機関に担当者が決まっていれば、事前にその担当者とやり取りをして、決済手続当日に改めて連絡を入れることでその場で着金確認ができてスムーズに進みます。

しかし、金融機関によっては担当制を取っていない場合(電話に出た人が対応)や決済手続の場所から近い支店で抹消書類を受け取れるように段取りしている場合は、いくら事前に準備をしていても、決済手続当日の着金確認で金融機関の方から「ご本人様でないとお答えできません」と言われてしまうことがあります。

決済手続当日にいきなり着金確認の電話をしているわけではなく、事前のやり取りをしていてもこういう事があるんですよね。

これなんとかして欲しい・・・。

このような場合には決済手続の場所にいる売主様に電話をお繋ぎし、直接確認をしていただきます。

解散してしまうと、売主様とはその場から離れてしまうので着金確認ができず、完済先金融機関で抹消書類を受け取ろうとしても時間を要してしまうということが考えられます。

 

金融機関指定の委任状忘れ

完済した金融機関から抵当権を抹消する書類を本人の代わりに受け取る場合は、「受領用の委任状」が必要になります。

通常では、司法書士が登記用の委任状と合わせて、受領用の委任状を用意しておき、決済当日に売主様にご署名いただき、その委任状を持って完済先の金融機関へ出向き、抵当権等の抹消書類を受け取ります。

金融機関によっては「金融機関指定書式の委任状」の提出を求めてくることもあり、その委任状は金融機関から直接売主様へ交付(郵送)されます。

この委任状が無いと着金確認自体はできても、完済金融機関で抵当権抹消に関する書類が受け取れません。

引渡し手続に、金融機関指定書式の委任状の持参を忘れてしまった場合は、売主様と一緒に完済金融機関へ出向き、直接受け取っていただくことになります。

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最後に

以上、決済手続の着金確認に関すること自分の経験談を踏まえて書いてみました。

「銀行から振込伝票が無事に出てきたし、振り込まれたのは間違いない」と考えるのは、少し立ち止まった方がよいかもしれません。特に抵当権等の抹消がある場合は。

何百件も決済手続の立会いをしてきても色んな事態が考えられるので、慎重に取り組む姿勢が求められます。

今回はここまでです。最後までお読みいただきましてありがとうございました。

ではまた。

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