司法書士業界のブラック事情。辞めておいた方がいい事務所

司法書士

みなさん、こんにちは。司法書士・行政書士の松崎充知生(まつさき)です。

気候が涼しくなり、過ごしやすい季節になってきましたね。

10月に入ると、司法書士筆記試験の合格発表があり、司法書士事務所または司法書士法人の就職活動を始める方も少しずつ出てくると思います。

就職活動は、最終合格を確認後すぐ動く方もいれば、一通り研修を終えてからの方もいて、時期は人によって様々です。

 

私自身、司法書士業界に入って2年ほど経過しますが、実務をしながら思ったことは、司法書士業界は、実務に関連する法改正、裁判例・判例、登記先例、手続の効率化については理解を深めようとする試みがありますが、労働法に対する問題意識はあまり高くないということです。

従業員の定着率や職場環境の改善を熱心に考えている司法書士事務所もあれば、労働法等の法律に反するブラックな事務所も一定数存在します。

司法書士資格を取得すると独立開業できるようになりますが、独立するために退職する人だけでなく、今の職場の何らかの問題で退職する人がとても多い印象です。

司法書士業界内では、こういった問題を耳にすることがあります。

長時間労働

休日対応の常態化。

給与や残業代の未払い。

事務所内でのパワハラ、セクハラ。

事務所の代表者と性格が合わない。

お局さんがいて人間関係が良くない。

こういった問題は、残念ながら実際に事務所に入所してみないと分かりません。

今回は、主に入所前の段階の問題点を挙げて、辞めておいた方がいい司法書士事務所 について書いていきます。

では、見ていきましょう。

 

辞めておいた方がいい司法書士事務所

求人内容が古い

司法書士事務所の求人情報は長期間掲載されていることがあります。

司法書士合格者は全国で毎年600名ほどしか出ませんし、司法書士事務所に勤務せずに即独立する人も一定数いて、社会に輩出される司法書士資格者数がそこまで多くないからです。

新人司法書士や事務所所属の勤務司法書士が転職する時期も個人によって異なるので、自分の事務所に迎え入れられるように求人情報を掲載しています。

しかし、求人情報を掲載している事務所の中には、数字が昨年以前のものや法改正前の用語を掲載している等、古い情報を使いまわして採用活動に力を入れていない事務所もあります。

古い求人情報と実際の労働状況のギャップが大きいと、せっかく入所したとしても早い段階で退職を考えるようになるでしょう。

求人情報の内容は、その事務所の「従業員に対する向き合い方」が現れています。入所してくる従業員を使い捨てのように取り扱う事務所もあるかもしれません。

面接時に改めて求人情報に最新の情報で間違いがないか、事務所代表者の従業員の対する向き合い方を確認をしておきましょう。

 

基本給が最低賃金未満

司法書士事務所の求人情報にはこういった記載があります。

給与 ○○万円(みなし残業○○時間を含む)

本来であれば、「基本給○○円、みなし残業代○○時間○○円」といったように内訳を設けて記載するべきですが、基本給とみなし残業代を合計した額を記載することで、給与が高く見えるように掲載している事務所が結構多いです。

これでは基本給、みなし残業代がそれぞれいくらなのか不明なので、条件に合致しているかどうかの判断ができません。

所定労働時間を超える時間に対して支払われる賃金は、最低賃金の対象ではありませんので、みなし残業代の額を除いた基本給が最低賃金を下回っている給与額の設定は違法となります。(最低賃金法第4条)

令和5年10月から新たに最低賃金の改定がされました。各都道府県の最低賃金の内容はこちら↓↓

地域別最低賃金の全国一覧

最低賃金の計算方法は厚生労働省のページをご参照下さい。↓↓

最低賃金額以上かどうかを確認する方法|厚生労働省
最低賃金額以上かどうかを確認する方法について紹介しています。

みなし残業代を含めた給与を掲載している司法書士事務所への入所を検討されている方は、

面接の時にでも基本給とみなし残業代の内訳を確認しておきましょう。

また、みなし残業代は時間外労働に該当しますので割増賃金(基本給の時給額の1.25で算出されている必要があります。(労働基準法第37条)

みなし残業時間が多い事務所は、計算してみると最低賃金を下回っていたり、みなし残業代が割増賃金で算出されていない可能性がありますので、自分でも計算してみましょう。

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労働条件通知書が発行されない

事務所側が従業員を雇用したときは、その従業員に対して、雇用契約の期間、就業場所、業務内容、始業時刻・終業時刻、その他労働条件に関する内容を記載した書面(労働条件通知書)を発行する義務があります。(労働基準法第15条1項)

発行が無いと、「当初聞いていた労働条件と違う」として事務所・従業員間でトラブルに発展しかねないからです。

労働条件通知書は事務所への入所が確定してから雇用契約書を締結するまでの間に発行されるのが一般的です。

求人情報に内容を記載してあるからと別途、労働条件通知書を発行しない場合は違法となります。

また、労働条件通知書が発行されない、労働条件が事実と異なる場合、従業員は即時に労働契約を解除することができます。(労働基準法第15条第2項)

民法上の雇用契約の解約(民法第627条第1項)のケースと異なり、2週間を待たずして合法的に退職ができます。

労働条件通知書は入所前に必ず取得しておくべきですが、発行されない場合は内定辞退をされた方が良いです。

 

 

司法書士登録をさせない

求人情報で「司法書士」を募集しているのに、司法書士登録をさせない事務所もあります。

未経験で司法書士業界に就職する方に業務の流れを覚えてもらう為に、数カ月間、司法書士登録を保留にしておくという方針であれば合理性があり、そのような運用をしている事務所もあると思います。

しかし、代表司法書士の名前で登記申請をするので、従業員に司法書士登録をさせない事務所への就職は実質的に補助者採用と何ら変わりません。

司法書士に登録すると、顧客の本人確認、相談業務、代理人として登記申請ができるようになります。

また、司法書士会による研修を受講できたり、会員同士との情報共有、法改正や会報等の情報を収集しやすくなります。

司法書士登録ができない事務所では、できることが限られてくる為、何の為に資格を取ったのか分からなくなり、物足りなさを感じてしまうでしょう。

入所してから登録できないということにならないように、面接時に登録の可否や登録時期をあらかじめ確認しておくことが必要です。

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退職時に資格登録費用を返還する規定がある

司法書士事務所の求人情報の中にはこういった記載があります。

登録費用 事務所負担(返金規定あり)

登録費用 事務所負担(○年以内に退職した場合は返金規定あり)

入所した者が事務所負担で司法書士登録をし、事務所側がその後に退職する司法書士に対し、登録費用の返還を求める規定を置くことは違法となります。

せっかく事務所で登録費用を負担したのに、その司法書士が一人前になった後に退職してしまうのは経費が勿体ない、あまりに不義理だとする考え方も分かります。

しかし、退職時に資格費用(登録費用)の返還をする規定を置くことは、労働基準法16条(賠償予定の禁止)に抵触しますので、このような規定は無効となります。

従って、退職者に登録費用の返還を求めることはできません

一方で、事務所が登録費用を貸与する形式は、労働基準法16条の例外として返還を求めることが認められることがあります。

この場合も労働者が自由な意思で貸与するかどうかを選択できること、雇用契約書とは分けて金銭消費貸借契約を締結すること、一定年数勤務し続けたら返済を免除にする条件を付けておくことが必要です。

また、免除にするまでの期間が年単位になるような場合は、在籍年数に応じて免除の割合を設定しておくこと(勤続○年で○割免除、勤続□年で全額免除等)も必要になってくるでしょう。

入所前に十分な説明がなされ、上記の手続を経ていれば登録費用を貸与する形式でも問題ありません。

しかし、金銭消費貸借契約書を交わしていなかったり、所内規定を「貸与」の文言にしただけの名ばかり貸与の場合は、実態として返還規定を設けているのと変わりない為、やはり労働基準法16条違反となり、無効になる可能性が高いです。

 

事務所に勤務している同期の話を聞いていると、退職時に足止めをされてトラブルになるケースはよく耳にします。

「退職を申し出たところ、代表から会費、登録費用を返金するように求められて喧嘩別れをした。」等々。

司法書士業界にもこのようなお礼奉公の慣習がまだ残っています。

貸与契約の有効無効を問わず、これから人間関係を作っていこうとする職場で最初から「勤務年数縛りがある」ことは、多少の抵抗を感じる方もいるでしょう。

皆さんは「退職することに条件が付いている職場」をどのように思いますか。

  

分業制を採用している

司法書士事務所も分業制や担当制を設けて業務をしています。

分業制は、特定の業務のみを集中的に行い、完了したら別の人へ引き継ぐというもの。

担当制は、一人のお客様の案件を最初から最後まで担当するというものです。

司法書士事務所、司法書士法人によって方針は様々ですが、取り扱う案件数が多くなれば、業務効率や生産性を上げる為に、分業制になりやすくなります。

それぞれにメリット、デメリットがありますが、分業制はあまりお勧めできません。

特定の業務のみを経験を重ねてても、司法書士としてのスキルがいつまでも身に付かないからです。

どの過程も大切ですが、例えば相続登記の案件で戸籍収集だけできても、申請書や添付書面の作成はできない、お客様との連絡・面談ができない、お客様へ何を発送すべきか分からないという事が起きます。

最近は担当制を取っている事務所も多くなっています。案件によって担当制、分業制、チーム制を柔軟に振り分けている事務所もあるようです。 

面接時では、入所した場合の業務の流れやどういった業務に携わることができるか確認を取るようにしましょう。

なお、お客様との面談や不動産の決済立会いは司法書士しかできませんので、その業務が集中することになります。この点は分業の性質があり、制度上受け入れるしかないでしょう。

また、担当制の事務所では自分が不在にするとその案件自体が止まってしまうので、そのような事情が出てきた場合は、事前に事務所内の方達と連携を取っておくことを意識することが大切です。

 

補助者決済をしている

補助者決済とは、司法書士ではない事務所の従業員(補助者)が不動産のお引渡し手続に立ち会い、売主様、買主様の面前で本人確認を行うというものです。

補助者が不動産のお引渡し手続の場で、売主様、買主様の本人確認を行うことは、各都道府県の司法書士会会則で取り締まっており、司法書士会の懲戒処分の対象になります。

懲戒事例では、司法書士ではない補助者に不動産決済時の本人確認をさせたとして処分された司法書士事務所の代表が少なくありません。

私も不動産営業時代の頃、決済をする度に司法書士の肩書がある方の名刺をいただいたり、司法書士の肩書が無い方の名刺をいただいたりする機会が何回もありました。今更ですが、肩書が無い方の名刺を交付してきた司法書士事務所は補助者決済を行っていたということが司法書士業界に入ってから知ることになりました。

司法書士が不動産決済の場で本人確認をする必要がある為、決済の日程が重なってしまった場合、事務所によっては決済ヘルプ(外部の司法書士に本人確認業務を依頼する場合)を利用して工夫をされているところもあります。

面接時に不動産決済の月間件数や決済当日は誰がどのように動いているのか流れを確認してみましょう。

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取引先にキックバックを支払っている(うわさがある)

司法書士事務所が取引先から登記案件をいただく代わりに、案件で受領した報酬の何割かをその取引先に支払うことをキックバックと言います。

不動産会社、遺品整理会社、葬儀会社、保険会社、税理士・行政書士等の他士業は、司法書士業界と繋がりがある為、案件をいただく際にキックバックについての話題が出てくることがあると思います。

取引先に対するキックバックの支払いは、司法書士法施行規則、司法書士倫理、各都道府県の司法書士会会則で「不当誘致」として禁止されており、司法書士会の懲戒処分の対象となります。

これは取引先にキックバックを支払う事務所がお客様に請求する報酬をその分だけ上乗せする為、結果的にお客様が相場よりも高い登記費用を支払うことになり、司法書士業界の信用に影響が生じるとされているからです。

一度キックバックの支払いを始めてしまうと、その取引先関連の案件についてキックバック無しで業務を進めることはできなくなり、今後もずっと支払いを続けることになります。

面接時に「キックバックを支払っていますか?」と聞いてみても、「はい、支払ってます」との回答を得られることはまず無いでしょう。

「司法書士業界のキックバックについてどのように思われますか?」と質問をしてみるのが良いです。

キックバックを支払っていない回答が得られれば良いのですが、曖昧な回答をしている場合は支払っている心当たりがあると考えて良いでしょう。

いつ懲戒処分を受けてもおかしくない事務所に勤務することは将来の自分のキャリアにも影響してきますので避けるべきです。

 

ネット銀行提携業務(EAJ業務)がある

ネット銀行は、住宅ローンに必要な登記業務を「登記業務委託会社(EAJ)」に一括で依頼しています。(EAJは株式会社エスクロー・エージェント・ジャパンの略称です。)

その登記業務委託会社(EAJ)が、自社に登録している司法書士事務所の中から選んで、登記業務をその司法書士事務所に依頼します。依頼を受けた司法書士事務所がネット銀行提携司法書士としてお客様とやり取りをして住宅ローンに必要な登記申請を行います。

その登記申請をした司法書士事務所が登記業務委託会社(EAJ)に対して、1案件ごとに業務に対する対価(名目上はシステム利用料)を支払っていることが司法書士法施行規則、司法書士倫理で禁止されている「不当誘致」に該当しうる為、司法書士業界で問題となっています。

前述したキックバックと同様、不当誘致になる場合は、司法書士会の懲戒処分の対象となります。

あくまで懲戒処分の対象となるのは、業務委託会社(EAJ)ではなく、「対価を支払っている司法書士」の方です。

不当誘致に該当するかどうかの議論はここでは避けますが、ネット銀行提携業務をしている司法書士事務所にいると、1案件あたりの業務量が自動的に増えることになります。

ネット銀行には、メガバンクや地方銀行、信用金庫のように店舗がありません。

店舗がある金融機関の住宅ローンを利用する場合、その店舗の銀行員が窓口となって不動産の買主様と金銭消費貸借契約(金消契約)等を締結し、後日、司法書士がその銀行員から登記必要書類を受け取り、不動産決済当日に抵当権設定登記を申請します。

しかし、ネット銀行では店舗が無い為、ネット銀行の提携司法書士が銀行員の代わりとして直接、不動産の買主様から登記必要書類を取得する段取りをすることになります。

店舗がある金融機関では、お客様からいただく書類について、銀行員・司法書士間で役割分担ができますが、ネット銀行ではお客様からいただく書類の案内は全て司法書士が行うということです。

金融機関によっては金消契約が土日祝日も対応できるところもあります。ネット銀行の提携司法書士は、銀行員の役割を担っている為、休日対応も常態的になるでしょう。

また、ネット銀行が関連してくる不動産の引渡し手続には、所有権移転担当の司法書士と抵当権設定担当の司法書士が存在することになりますので、買主様や不動産会社の対応に加えて、所有権移転担当の司法書士とのやり取りもしていくことになります。

ネット銀行提携業務では、基本的に抵当権設定のみ、(借り換えの場合)抵当権抹消と抵当権設定のみで、取り扱う登記申請の内容も限られてきます。(通常の決済と同様に、所有権移転分の登記申請もネット銀行提携司法書士がまとめて受任するケースもありますが。)これでは分業制のケースと同様、司法書士としてのスキルがいつまでも身に付かないということが考えられます。

1案件について論点を考えながら業務に取り組むよりも、あらかじめ決められている業務をして申請件数を重ねていきたいという方には、ある意味向いているかもしれません。

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(従業員が10人以上の場合)就業規則が無い、または閲覧できない

常時10人以上の労働者を使用する雇用主は就業規則を作成する義務があり、管轄の労働基準監督署に届出をする必要があります。(労働基準法第58条)

従業員が10人以上いるのに、就業規則が無い場合は違法となり、雇用主に対して30万円以下の罰金が科されます。

また、就業規則には従業員に周知する義務があります。(労働基準法第106条) 作成していたとしても、従業員が閲覧できる環境がなければ就業規則でいくら規定を設けていても効力を持ちません。

事務所に対して就業規則の閲覧を求めても応じてくれない場合は、労働基準監督署で閲覧を求めることができます。

労働状況について疑義が生じた時には、労働基準法等の法律を調べることになりますが、内容によって職場が各々決められるものもあるので、自分の職場ではどうなっているか就業規則で確認をすることになりますが、就業規則そのものが無いとなると何も判断ができません。

なお、従業員が10人未満の場合は、就業規則の作成義務はありません。個人事務所ですと人数も少ない為、就業規則自体が無いケースも多いかと思います。

その場合は事務所の代表が何か疑問が生じた時に相談しやすい人柄かどうかを面接時に見極めていくことになるでしょう。

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さいごに

いかがでしたか。

今回は少し踏み込んだ話題になりましたが、自分の思ったことを踏まえて挙げてみました。

司法書士業界の労働事情については、あまり良い話を聞かないので、現在の問題点を提起して少しでも業界全体が改善に向かっていければと思います。

今回はここまでです。最後までお読みいただきありがとうございました。

ではまた。

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