みなさん、こんにちは。
司法書士・行政書士の松崎充知生(まつさき)です。
平日の仕事終わりや休日を利用して行政書士の「一般倫理研修」を受講しました。
「一般倫理研修」は行政書士による職務上請求の不正利用が多いので、令和5年8月31日から行政書士全員に受講が義務化された研修です。
令和6年3月31日までに受講する必要があり、何とか期限内の受講に間に合いました。
職務上請求は、士業が顧客から依頼を受けた業務の範囲内で、第三者の住民票・戸籍謄本等を請求することができる制度です。利用できる士業は以下の通りです。
- 弁護士
- 司法書士
- 行政書士
- 弁理士
- 税理士
- 社会保険労務士
- 土地家屋調査士
- 海事代理士
依頼人から委任状を取得しなくても職務上請求書を役所に提出することで戸籍謄本や住民票が取得できるので、業務が円滑に進むのですが、利用には厳格な要件があります。
行政書士における職務上請求が利用できる要件は以下のとおりです。
- 行政書士の書類作成業務を行うために必要であること
- 本人からの直接の依頼があり、かつ本人確認を行った上で受任したものであること
日本行政書士会連合会 職務上請求書取扱説明書(行使の要件3原則)から引用
- 請求の内容及び提出先が適正であること
職務上請求書が不正利用と判断された場合は、懲戒処分の対象となります。
懲戒処分は日本行政書士会連合会や各都道府県の行政書士会のホームページ等によって氏名や事務所所在地が公表されます。行政書士になると、毎月「月刊日本行政」という広報誌が送られてきますが、その中にも懲戒処分事例が掲載されていますね。電子版も公開されているので行政書士でない方も見ることができます。
これまでいくつかの事例を見てきて、行政書士の懲戒処分としてよく出てくるケースは以下の通りです。
- 会費の滞納
- 業務の長期間放置
- 行政書士補助者へ業務の丸投げ
- 補助金・助成金の不正申請
- 在留資格等をはじめとする許認可の不正申請
- 紛争性のある民事案件の介入・交渉(非弁行為、弁護士法72条違反)
- 登記申請の代理・法務局に提出する書類作成(非司行為 司法書士法73条違反)
- 職務上請求書の不正使用
この中でも特に多いのが職務上請求の不正使用です。
行政書士業務外のものとして例えば、個人的に身元を知りたい、依頼人に頼まれたから取得した戸籍謄本を渡す、登記申請に利用する、裁判所に提出するといった場合に職務上請求を利用するケースでは、前述した職務上請求の利用要件を満たしていないとして、懲戒処分の対象になります。
過去には探偵から特定人物の戸籍謄本や住民票の取得を依頼されて、職務上請求を利用してその探偵に交付した行政書士が懲戒処分を受けたケースもあるようです。
行政書士の中には職務上請求書は利用せずに依頼人から戸籍取得用の委任状を取得したり、依頼人に事前に取ってきてもらう方もいらっしゃいます。
また、行政書士業務の中には「被相続人の預金解約業務」がありますが特に注意が必要です。
この預金解約業務のみの為に職務上請求を利用することはできないとされています。書類作成を伴わない手続であるからです。(日本行政書士会連合会 職務上請求書取扱説明書 事例11参照)
一方で預金解約に伴い遺産分割協議書や法定相続情報一覧図を作成する場合は職務上請求書を利用することが可能です。
相続人が一人である場合や預金解約先が1機関の場合は、依頼人から委任状を取得する事も視野に入れておく必要があります。
不正使用が多い背景から、日本行政書士会連合会会則の改正により行政書士の職務上請求の利用がかなり厳格になりました。
新たな職務上請求書を購入する際、申込書、誓約書、一般倫理研修修了証、使用済みの職務上請求書の冊子を所属する行政書士会に提出することになりますが、事務局によって使用済みの職務上請求書の記載内容に問題がないかどうかを調査をしていくことになります。
使用頻度が1年間で10冊を超えると追加書類の提出も必要となります。
行政書士は試験合格後に、どこかの事務所で修行する機会がほぼ無い為、独立開業して試行錯誤しながら実務を身に付けていくことが主流になっています。行政書士会の研修制度は業務に関するものはありますが職務上請求に関するものはほぼ無く、独学状態になっています。
一般倫理研修が導入されたことにより、職務上請求書の取得に条件が付きましたが、今後不正使用が増え続けると職務上請求自体が利用できなくなるリスクも出てくるため、業界全体として何とか改善に向かってほしいものです。
今回はここまでです。最後までお読みいただきましてありがとうございました。
それではまた。
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