みなさん、こんにちは。
司法書士・行政書士の松崎充知生(まつさき)です。
新年度がスタートしましたね。新年度の評価証明書が取れるようになりましたので、各役所で取り直しをするとともに4月から施行の法改正情報を確認しているところです。
行政書士界隈の話題になりますが、令和6年4月1日から行政書士職務基本規則が施行されました。
施行に伴いこれまでの行政書士倫理は廃止され、行政書士倫理にあった規定がさらに細分化、明確化されました。行政書士倫理が33条まであったのに対し、行政書士職務基本規則は全部で81条まであります。
内容を見てみると、行政書士としての一般規律だけでなく、特定行政書士、申請取次行政書士、成年後見業務、財産管理事務、補助金等申請業務、行政書士法人、他の行政書士との関係に関する規律まで用意されています。
特に注目するべき部分は第15条(不当誘致行為の禁止)に関するものです。
行政書士職務基本規則
第15条 (不当誘致行為の禁止)
行政書士は、不正又は不当な手段で、依頼を誘致するような行為をしてはならない。
2 行政書士は、金品の提供、供応その他不当な行為により行政書士の業務の依頼を誘致してはならない。
3 行政書士は、依頼者の紹介を受けたことについて、その紹介の対価を依頼者の報酬に上乗せしたり、職務内容と比較して法外な金額を請求したりしてはならない。
4 行政書士は、依頼者の紹介をしたことについて、その対価を要求してはならない。
不当誘致行為の禁止規定の中で、行政書士のキックバックを禁止する規定が明文化されました。
キックバックとは、行政書士が取引先から案件をいただく代わりに、案件で受領した報酬の何割かをその取引先に渡すお金や財産的価値のあるものを指します。(紹介料、マージン、リベート、コンサル料と呼ぶこともあります。)
キックバックは、行政書士がお客様からいただいた報酬の中から取引先に支払われる仕組みになっており、結果的にお客様がキックバック分を負担することになる為、信頼を損なう行為として士業業界では問題になっています。
これまでは弁護士、司法書士についてはキックバックを禁止する規定がありましたが、行政書士には禁止する規定がありませんでした。(不当誘致を禁止する規定自体はありましたが、内容が曖昧で多くの人は行政書士のキックバックは禁止されていないと解釈している状態でした。)
司法書士におけるキックバック問題はこちらの記事で解説しています。↓↓
特に司法書士と行政書士のダブルライセンスを持つ士業が司法書士の立場でキックバックを支払うと懲戒処分の対象になってしまう為、禁止されていない行政書士の立場を隠れ蓑として支払っているケースがありました。
残念ながら一部の士業にはこういったことをしている方がいるようです。(領収書の発行や会計処理をどのようにしているのか分かりませんが。)
しかし、今回の行政書士職務基本原則が施行されたことにより、行政書士によるキックバックも正式に禁止になりました。
行政書士の懲戒処分では、これまで行政書士倫理の規定も根拠になっていますから、行政書士職務基本原則も同様に懲戒処分の根拠規定になることでしょう。
日頃から営業活動をしていると、取引先からキックバックの話題になることがあります。主に司法書士業務の決済案件が発生した時です。業務のご依頼いただくことは大変ありがたいことですが、私自身、キックバックのご相談は完全にお断りしています。
引き受けてしまうとその支払い分がお客様の負担になってしまうほか、取引先間で主従関係が生まれ、後に懲戒処分になるリスクを抱えながら業務に取り組むとになると、正常な判断ができなくなるからです。
また、実態にそぐわない架空の請求書や相手先を明かせない請求書を作ることを余儀なくされると、会計処理が不自然になり、通常業務にも支障が出てきます。
過去に不動産仲介の営業職に従事していましたが、幸いにも自分の周りにはキックバックを持ちかける方がいらっしゃらなかったので、一度もキックバックに関与したことはありません。営業成績が伸びずに辛い時期もありましたが、キックバックをしなくても迅速で丁寧な対応を継続していけばお客様からの口コミやリピート契約等が徐々に発生していくものです。
行政書士職務基本規則には、その他にも職務上請求の利用、一般倫理研修、SNSの活用、ハラスメント等に関する規定も追加されています。今回明文化されたものは行政書士として懲戒事例の多いものにも対応してきているように思います。
まだ施行されたばかりなので、行政書士職務基本規則ができたこと自体を知っている人も少ないと思います。私も4月1日施行の制度を探していてたまたま見つけました。士業によるキックバックの違法性を知らずにやり取りしている取引先もまだまだあると思いますので、これから周知化されていくことに期待したいところです。
今回はここまでです。最後までお読みいただきありがとうございました。
それではまた。
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