みなさん、こんにちは。
司法書士の松崎充知生(まつさき)です。
本記事では認定考査について、令和4年度の受験体験をもとに解説いたします。
認定考査は、特別研修を終えた司法書士が、認定司法書士になる為の試験です。
特別研修については、こちらの記事で解説しておりますのでご参照下さい。
以下見ていきます。
認定考査の日程
法務省のホームページから毎年、受験案内について発表されますが、
認定考査は特別研修修了後、約2ヶ月後に実施されます。
第21回(令和4年度)の認定考査は、
令和4年9月11日(日)に早稲田大学早稲田キャンパス22号館で実施されました。
試験時間は13時~15時からの2時間です。
着席時刻:12時40分 指定時刻:12時50分などの決まりがあり、指定時刻に試験会場の自分の席に座っていないと試験が受けられなくなりますので注意が必要です。
持ち物は、受験票、黒インクのボールペン(インクが消せるものは不可)の2点です。
認定考査は、自分の文章を書いていく記述式なので、司法書士本試験の記述問題を解く時と同様、ボールペンで回答用紙を埋めていくことになります。
シャーペンや鉛筆を問題検討の為にメモすることは問題無いですが、シャーペンや鉛筆で書いた回答用紙は採点されませんのでご注意下さい。
合格率
認定考査は、70点満点中40点以上を取ると 合格 です。
合格率は以下の通りです。
平成30年度 43.1%(受験者874名、合格者377名)
平成31年度(令和元年度)79.7%(受験者936名、合格者746名)
令和2年度 79.0%(受験者625名、合格者494名)
令和3年度 70.6%(受験者591名、合格者417名)
令和4年度 65.3%(受験者643名、合格者420名)
令和5年度 77.2%(受験者728名、合格者562名)
令和4年度は難易度が増したのか、合格率が6割台に、、、
受験生は全員司法書士試験合格者ですから、その中から更に6〜7割に絞られるとなると、結構プレッシャーですね。
周りには1回で合格した先輩もいれば、1回落ちた先輩、複数回落ちてその後に合格した先輩等、様々でした。
使用教材
考査までの勉強時間で使っていた教材は以下の通りです。
- 認定司法書士への道 理論編
- 認定司法書士への道 実践編
- 辰巳法律研究所 認定考査過去問集2冊(平成17年〜令和3年度分)
認定司法書士への道2冊は特別研修でもZOOM講義を中心にガッツリ利用しました。
教材はこれだけで十分です。
上記の認定考査過去問集は本試験の記述問題について開示請求をした答案を辰巳法律研究所に提供すると、特典として後日貰えます。
私は辰巳受講生ではありませんでしたが、松本雅典先生の本試験記述答案のリサーチ力は高く、これまでの受験生の開示答案から本試験の採点傾向を分析されており、私も受験生時代に大変役立てることができました。
今回私も答案を提供して過去問集を取得しました。
なお、過去問集は市販でも販売されています。
考査までの受験期間
前述の通り、特別研修が終わってから認定考査までの期間は約2ヶ月です。
私は司法書士事務所で働いていたので最初の1ヶ月間は机に向かう気が起きず、勉強したのは通勤や決済に向かう際の電車の中で「認定司法書士への道」に目を通すくらいでした。
実際に机に向かったのは考査1ヶ月前の8月頃からでした。
8月に入り、仕事から終わって過去問を毎日1年分、認定司法書士への道 実践編 1問分を解いてました。文章を書く記述の問題なのでとにかく解き切るのに時間がかかります。
残業も多少あったので帰宅してから就寝するまでの間でこのノルマが精一杯だったような気がします。
自宅ではアウトプットを重視し、ルーズリーフにとにかく要件事実を書きまくる、インプットは日中の昼休みや電車の移動中に教材の読み込みをしていました。
8月下旬に入り体調が優れないので、病院に行ったところ、ここでまさかの、
39度以上の高熱!!
コロナウィルスの陽性反応が出てしまいました・・。
仕事を休み、しばらく自宅で過ごすことになりました。当時の自宅療養期間は10日でしたので、日数計算すると、自宅待機が明けて回復後すぐ考査日を迎えることになりました。
発症日が少し遅れていたら、受験できなかったので直前期はヒヤヒヤものでした。熱は2日で下がったので、残りの8日間、自宅でガッツリ勉強しました。
直前期1ヶ月間で、認定司法書士への道 理論編、実践編は3周ほど、過去問は2周ほど回しました。平成17年、18年あたりの過去問は今の認定考査の出題形式と異なり、シンプルな問題が多く、5ページほどの短い文章になっている為、他の問題を何回も解き終えて余裕がある方は解き始めると良いと思います。
直近の過去問はなるべく考査前日に令和3年度(前年度)の過去問を解いて問題慣れをしておけるよう解くスケジュールを組みました。
考査当日の段階で、認定司法書士への道 理論編にある要件事実は一通り覚えている状態、司法書士倫理の問題が多少曖昧な部分はあるが何とか解ける状態まで仕上げました。
司法書士倫理の問題は「できる、できない」の解答をするのはもちろんですが、「できる。ただし、〇〇の場合はできない」「できない。ただし、〇〇の場合はできる」といった場合分けをして回答する必要があります。
自分の文章表現を考えることになる為、中々取りかかりにくかったです。
認定考査当日
令和4年9月11日(日)、認定考査当日。
体調が回復し、受験票とボールペンなどの筆記用具を持って早稲田大学へ。
受験会場入口で、「受験部屋番号・入口案内図」と「認定考査の成績通知について」の書面を受け取り、自分の受験番号がある教室へ向かいます。
久しぶりに同期達との再会しました。
受験番号は、東京、神奈川、埼玉等のエリアごとの願書を提出した順のようでした。
私の受験教室には埼玉の同期たちがちらほら。
私は願書締切日に出したので埼玉の中では一番後ろの受験番号だったようです。
令和3年度では「賃貸借契約の終了に基づく目的物返還請求権としての建物明渡請求権」と「所有権に基づく動産引渡請求権」の要件事実が出題されましたが、私が受験した令和4年度は「所有権に基づく妨害排除請求権としての抵当権設定登記抹消登記請求権」の要件事実が出題されました。
要件事実を書く問題は1問分だったものの、カッコ内に言葉を入れる問題が出たり、設例に対してできるのかできないのか、その理由を書く問題が多かった印象です。
そして問題分量は全部で7ページ。第1問~第3問まで。
第1問は小問が8題、第2問は小問2題、第3問は小問2題(場合分けされていてその結論、理由を書いていく形式)。
時間配分に注意を払いましたが、2時間があっという間やってくる記載量でした。
考査終了後、研修で同じグループだった同期達と合流し、夜ご飯を食べながらみんなで答え合わせをしました。
自己採点の結果、少し失点はしているものの、合格点の40点は超えているだろうと予想しました。
合格発表
認定考査の合格発表は12月上旬です。
司法書士試験(筆記試験)の時と同様、結果が出るまで3ヶ月ほど待つことになります。
令和4年度は12月7日(水)16時に、法務省HPには受験番号が、考査会場を管轄する法務局前の掲示板には受験番号と氏名が貼り出されました。後日、官報にも受験番号と氏名が公開されます。
通常の資格試験と異なり、受験生が知り合いばかりなので法務局掲示板や官報を見ると、誰が合格で、誰が不合格なのか分かってしまいます。
法務局から認定証書(司法書士試験の合格証書と同じサイズのもの)を発行するので、直接取りに行くまたは郵送するので切手を貼った返信用封筒を提供するように求められます。
その後の手続として、現在持っている司法書士証、証明写真(縦4cm横3cm)、収入印紙5000円分を添付して、所属する司法書士会へ提出します。
数日後、認定番号が記載された新たな司法書士証を取得すると、認定司法書士となり、簡易裁判所管轄の訴訟業務を行えるようになります。
司法書士会から「認定証明書(簡裁訴訟代理等関係業務)」という司法書士証と同じサイズのカードも発行されました。
成績通知
認定考査当日、受験会場で「簡裁訴訟代理等能力認定考査の成績通知について」という書面を受け取ることになりますが、受験者の中で希望する方は成績通知を受け取ることができます。
東京法務局民事行政部総務課に成績通知用の返信用封筒(長型3号、84円分切手貼付済のもの)を持参または郵送すると、翌年1月以降に自宅に成績通知が届くようになります。これは前述した認定証書用の返信用封筒とは別の手続です。
返信用封筒の表面には発送先の情報として自分の氏名、住所、郵便番号、裏面には受験地、受験番号を記入します。郵送の場合は、返信用封筒を入れた封筒の表面に「認定考査結果通知希望」と朱書きしておきます。
この成績通知ですが、申込期間がすごく短いです。合格発表後の令和4年12月12日~12月16日までだったので受験者の中には手配を忘れてしまった人もいるかもしれません。
令和4年度分の成績通知は、2月上旬に発送されたようです。
結果は…
41点。
もっと取れていたと思ってましたが、合格点ギリギリだったようです。
余計なことを書きすぎてしまったのかなーーー危なかった…
封筒に入っていたのは、このA4の紙一枚のみです。
何とか認定司法書士になれたので結果オーライです。
開示請求をすると、採点される前の状態の自分の答案を取得できるのですが、今回は取得しませんでした。
法務省に自分の答案を開示請求できるのは、試験実施から1年以内であり、それを過ぎてしまうと保管期間が切れて破棄されてしまうので、必要な方は忘れないようにしておきましょう。
まとめ
いかがでしたか。今回は認定考査について自身の体験を踏まえながらご紹介いたしました。
認定司法書士になることで、裁判業務ができるようになり、業務の範囲は広がってきます。
認定司法書士になったけれど、すぐ裁判業務に取り組まずにしばらく登記業務中心になる方もいると思いますが、いざという時に効果を発揮してくれるはずです。
皆さんの活躍を応援しています。
今回はここまでです。最後までお読みいただきありがとうございました。
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