遺言を書くなら、遺言執行者も忘れずに!

不動産登記

みなさん、こんにちは。司法書士・行政書士の松崎充知生(まつさき)です。

 

今回は、遺言執行者 について書いていきます。

相続のご相談では、遺言書を作成されている事例がまだまだ少なく、相続人同士の遺産分割協議によって相続手続を進めていくことが主流になってきますが、亡くなられた方が生前に遺言書を作成されている場合は相続手続がスムーズです。

遺言書を作成する場合は、相続させる対象者だけでなく、遺言執行者についても忘れずに記載をして欲しいところです。

 

相続登記に必要な書類

相続登記に必要な書類(遺言書がない場合)

  • 被相続人の戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍
    (出生から死亡までのものを全て収集する必要があります。)
  • 被相続人の住民票の除票 または本籍記載ある戸籍の附票
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 相続人全員が署名捺印した遺産分割協議書
  • 相続不動産を取得する相続人の住民票
  • 相続不動産の最新の評価証明書または名寄帳
    (相続不動産が全て記載されている場合は最新の固定資産税納税通知書でも可能)

※相続人間で法定相続分通りの分け方をする場合、印鑑証明書と遺産分割協議は不要です。

 

相続登記に必要な書類(遺言書がある場合)

  • 被相続人の戸籍謄本(原則として死亡日の記載があるもので足ります)
  • 被相続人の住民票の除票 または本籍記載ある戸籍の附票
  • 相続不動産を取得する相続人の戸籍謄本
  • 相続不動産を取得する相続人の住民票
  • 相続不動産の最新の評価証明書または名寄帳
    (相続不動産が全て記載されている場合は最新の固定資産税納税通知書でも可能)
  • 遺言書原本
    (法務局に保管していない自筆証書遺言の場合は、家庭裁判所発行の検認証明書も必要)

住民票の除票が取れない場合は以下の記事をご参照ください。↓↓

 

このように遺言書の有無で必要書類もだいぶ変わってきます。

遺言書がない場合は相続人の確定させる為、被相続人の出生から死亡までの戸籍をたどらなければなりませんし、相続人が確定したら更に相続人全員が印鑑証明書を用意の上、遺産分割協議書まで署名捺印する必要が出てきます。


遺言書がある場合は、被相続人の出生から死亡までの戸籍をたどる必要がなく、また相続人全員が署名捺印した遺産分割協議書も必要もなく、用意するべき書類が少なくてすむので、比較的にすぐに相続登記手続に入ることができます。

※遺言書があった場合でも、遺言書の中に記載されていない相続財産がある場合は、その相続財産については相続人全員で遺産分割協議が必要です。

 

遺言執行者の記載を忘れるとどうなる?

相続手続のご相談をいただく際、遺言書があるとすぐに書類作成に取りかかることができるのですが、この遺言書についても注意するべき点があります。

遺言書を作成している場合、遺言執行者を記載していなかったケースがあります。

 

遺言執行者とは、遺言の内容を実現する為に手続きをする人のことを指します。

 

民法 第1012条 (遺言執行者の権利義務)
 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
 遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。
 第六百四十四条、第六百四十五条から第六百四十七条まで及び第六百五十条の規定は、遺言執行者について準用する。

e-Gov法令検索 より引用

 

公正証書遺言の場合は、公証役場の公証人が事前に遺言内容を確認しますので、記載漏れがあった場合は遺言書の作成希望者に対して、「遺言執行者を誰にするのか」について助言をしてくることがある為、記載漏れになることは少ないでしょう。
弁護士、司法書士、行政書士等の士業がご依頼を受けて遺言書案文を作成する場合も同様で、遺言執行者についても記載して作成しているのが通常です。

公証役場や士業を通さずに、自分で作成する自筆証書遺言の場合は、「誰が、どの財産を、どれだけ相続させるのか」については記載されていますが、遺言執行者を誰にするのか記載していなかったケースは結構あります。

 

遺言執行者の記載が無いだけで遺言書が無効になるわけではありませんが、記載がなかった場合や遺言執行者となるべき者がすでに亡くなっている場合、以下の手続をするには、相続人全員の協力が必要になります。

  • 遺贈する」との記載がある遺言書を使う不動産の所有権移転登記手続
  • 相続財産に預金債権・有価証券がある場合の解約・払戻し手続

 

相続人全員の戸籍謄本や印鑑証明書等の用意が必要になってくるため、結果的に遺言書がない場合のように必要書類が増えてしまいます。

 

相続人全員が協力してくれる場合は、遺言執行者無しでも手続が進められますが、協力が得られない場合は、家庭裁判所に対して「遺言執行者の選任の申立て」をすることになります。

家庭裁判所から「遺言執行者選任審判書」が発行されれば、遺言執行者と相続財産を取得する相続人のみの協力で、相続登記や預金解約等の手続ができるようになります。

 

遺言執行者の選任の申立て手続

裁判所のホームページから詳細を確認できますので、こちらをご参照下さい。

遺言執行者の選任 | 裁判所
裁判所のホームページです。裁判例情報、司法統計、裁判手続などに関する情報を掲載しています。

 

 

申立ては、相続人、遺贈を受けた者、遺言者の債権者等の利害関係人がすることができます。

申立て先は、遺言者の最後の住所地の家庭裁判所です。

家庭裁判所へ直接持参することも郵送することも可能です。

申立てに必要な書類は以下の通りです。

  • 申立書  申立書記載例はこちらのご参照下さい。
  • 遺言者の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
    (申立先の家庭裁判所に遺言書の検認事件の事件記録が保存されている場合(検認から5年間保存)は添付不要)
  • 遺言執行者候補者の住民票または戸籍の附票
  • 遺言書のコピーまたは遺言書の検認調書謄本の写し
    (申立先の家庭裁判所に遺言書の検認事件の事件記録が保存されている場合(検認から5年間保存)は添付不要)
  • 利害関係を証する資料(親族の場合,戸籍謄本(全部事項証明書)等)
  • (遺言書1通につき)収入印紙800円分
  • 連絡用の郵便切手(申立て先の家庭裁判所の電話で確認が必要です。)

 

遺言執行者の候補者は、未成年者と破産者以外の者であればなることができます。

実務上は、相続財産を受け取る予定の相続人、遺贈を受ける予定の者、士業の方が候補者になっています。

相続財産を受け取る人が遺言執行者になれば、結果的にその人が単独で相続手続をすることができるようになります。

民法 第1009条(遺言執行者の欠格事由)
未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができない。

e-Gov法令検索 より引用

 

遺言執行者が選任されるまでの期間

遺言執行者の申立てから審判書が発行されるまで少なくとも1ヶ月半ほどの期間を要します。

申立て書類一式を家庭裁判所に提出して少し経過すると、申立人と遺言執行者の候補者の住所に「照会書」が送られてきます。

裁判所の処理状況によりますが、照会書は申立てから3週間~1ヶ月後に送られてくるケースが多いです。

照会書記載の質問内容に回答し、家庭裁判所へ返送をします。

遺言執行者を希望する理由」は文章で書くことになりますが、その他は「はい、いいえ」で回答できる質問内容になっています。

不備等がなければ、申立てをした裁判所から2週間~3週間後に申立人と遺言執行者の候補者の住所に「遺言執行者選任審判書」が送られてきます。

この書類を持って相続登記や預金解約等をしていくことになります。

このように遺言執行者が決まるまで時間がかかってくる為、前もって準備しておきましょう。

 

相続人の多い方や外国籍の方こそ、遺言書の作成を!

いかがでしたか。今回は遺言書の遺言執行者について書いてみました。

せっかく遺言書の作成をしたのに、不備が出てしまうと、遺言書の意味がなくなってしまうことが考えられますので、作成する上では残された相続人が揉めないように対策しておきたいですね。

上記にも相続登記に必要な書類を挙げてみましたが、遺言書がない場合は、被相続人の出生から死亡までの戸籍をたどることになり、また相続人全員の戸籍謄本や印鑑証明書が必要になってきます。

これらの書類を収集するだけでも時間も費用も膨大にかかってくる為、お子様や兄弟等の相続人が多い方や外国籍で日本国内に財産を所有している方は、あらかじめ遺言書の作成しておくことを強く勧めます。

外国籍の方も、遺言書がない場合は出生から死亡までの戸籍をたどり、日本国内に戸籍がない場合は母国で戸籍に代わる書類を取得することになりますから、それには翻訳作業や海外への郵送費用も別途必要になってきます。

遺言書があると、1~2ヶ月ほどで相続手続きが完了するものも、遺言書がないだけで半年~1年かかる場合もあり、相続人の誰かが遺産分割協議に協力いただけないと相続財産について何もすることができず、裁判所で調停手続を経る必要が出てきます。

こういったことにならないように事前に準備をしておきたいところですね。

今回はここまでです。最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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