相続登記手続で住民票の除票が取れない場合の他の方法

不動産登記

みなさん、こんにちは。司法書士・行政書士の松崎充知生(まつさき)です。

相続登記の義務化(令和6年4月1日)スタートまで残すところ1年を切り、相続登記手続のご相談をいただく機会が多くあります。

戸籍収集も含めて最初の段階からご依頼をいただくこともありますが、相続財産の中に預貯金や生命保険、年金等がある場合は、相続人が先行して戸籍書類を既に集めていることもあります。

 

不動産の相続登記手続に必要な書類は以下のとおりです。(原則)

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等
  • 被相続人の住民票除票(本籍記載あるもの) または 戸籍の附票
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 不動産を取得する相続人の住民票 または 戸籍の附票
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 遺産分割協議書(相続人全員が実印を押印したもの)
  • 相続する不動産(土地・建物)の最新年度の固定資産税の評価証明書 または 名寄帳の写し

 

不動産の登記手続についても集めていただいた戸籍書類を利用することができますが、被相続人の住民票の除票(戸籍の附票)を取得し忘れていたというケースがよくあります。

預貯金解約や生命保険金の受け取りには戸籍書類は必要ですが、被相続人の住民票の除票まで提出しなくても手続を進めることができるからですね。

不動産の相続登記手続では、戸籍書類だけでなく、被相続人の住民票の除票(戸籍の附票)も必要です。住民票の除票は住所地のある役所で、戸籍の附票は本籍地のある役所で取得します。

これは不動産登記簿上の所有者と、今回の被相続人が同一人物であることを証明する為にあります。

日本全国で同姓同名の人が複数人存在することは有り得る話ですので、法務局としては住所と氏名の二つが一致していれば、同一人物であるとして登記処理をしてくれます。

住民票の除票の中に、「登記簿上の被相続人の住所」が記載されていればその除票のみで足り、その記載がされていなければ住民票の除票に加えて戸籍の附票を取ることになります。

住民票の除票を取らずに最初から戸籍の附票を取って、その中に登記簿上の被相続人の住所の記載があればその戸籍の附票のみの用意でも問題ありません。

特に住民票の除票は「本籍記載あるもの」が必要となります。これは戸籍謄本と同一人物であることを証明する為です。役所で単に住民票の除票を交付請求をしても「本籍省略」で発行されてしまうので、交付請求時に本籍記載あるものを発行してもらうように希望を出しておく必要があります。

 

 

ここで問題となるのが、住民票の除票(戸籍の附票)の保管期間です。

被相続人が亡くなってからすぐであれば、役所で住民票の除票を取得することができますが、令和元年6月20日より前に亡くなっている方は、死亡から5年を経過していると、役所が被相続人の住民票の記録を破棄をしているので取得することができなくなってしまいます。(※役所によって別途、保管期間を決めていることもあります。)

令和元年6月20日以降に亡くなっている方は、住民基本台帳法の改正により保管期間が150年間になった為、取得できるでしょう。

戸籍の附票にも、住民票の除票と同じく保管期間の規定がありますが、被相続人が亡くなってから5年経過していても、世帯の中に生きている人がいる世帯の中に亡くなってから5年経過していない人がいる場合は被相続人分の戸籍の附票を取得できる場合があります。

 

住民票の除票(戸籍の附票)を取得することができない場合には、それに代わるものを準備することになります。

住民票の除票も戸籍の附票も取れない、登記簿上の住所が記載されていない場合、次に探すべきものは被相続人名義の権利証(登記済証または登記識別情報通知)です。

被相続人が当時の司法書士から権利証を受け取っている場合は、厚紙の中に挟んで冊子状態にしていますので、原本を探しましょう。

これは、登記簿上の住所との繋がりを証明できない場合でも権利証原本を持っているということは相続不動産の所有者であることが証明されるからです。

スポンサーリンク

 

権利証も見つからない場合は、次に考えるべきは上申書の作成(または遺産分割協議書に文言追加すること)です。

上申書は、相続人が一人である場合や相続人間で法定相続分通りに分ける場合等、遺産分割協議書を作成しない場合に用意すると良いと思います。以下、上申書の記載例です。

 

 

上申書を用意するのも良いですが、遺産分割協議書を作成する場合は、その中に以下の文を追記することで、遺産分割協議書と上申書の内容を兼ねる書面が出来上がります。上申書は法務局に提出したら手元に残りませんが、遺産分割協議書は相続人間で同一人物であることを確認をした証明として手元に残ります。これで用意するべき書面も減りますし、印鑑証明書を何枚用意するべきだっけ?と考えずに済みますのでお勧めです。(上申書に付ける印鑑証明書も原本還付は可能です。)

私も上申書の作成ではなく、遺産分割協議書に以下の文言を追記して登記申請することが多いです。

 

スポンサーリンク

 

法務局によっては他に別の書類を求めてくることもあるので、お手元にあれば最新年度の固定資産税納税通知書を用意しておくと良いでしょう。これは役所から不動産所有者に対して毎年5月頃に発行されるものなので、権利証の時と同様、原本を持っていると本人であることが証明されるからです。なお、この固定資産税納税通知書も原本還付は可能です。

 

以上をまとめると、

被相続人の最後の住所地の役所で住民票の除票(本籍記載あるもの)を取得
(※最初から戸籍の附票を取得することも可能)

(住民票の除票が取れない、取れても登記簿上の住所が記載されていない場合)
被相続人の本籍地の役所で戸籍の附票を取得

(戸籍の附票も取れない、取れても登記簿上の住所が記載されていない場合)
被相続人名義の権利証(登記済証または登記識別情報通知)を探す

(権利証がどこにも見当たらない場合)
上申書の作成 または 遺産分割協議書に被相続人が同一人物であることの文言を追記する

※手元にあれば固定資産税納税通知書原本とコピーも用意する。

といった流れになります。

 

【追記】
令和5年12月18日、法務省より被相続人の同一性を証明する為の上申書の作成について、被相続人の同一性の証明に関する不動産登記事務の取扱いについて(令和5年12月18日法務省民二第1620号)の通知が出されました。

一定の要件を満たしていれば相続人全員の上申書も不要となります。

詳細は別記事に書きましたのでご参照下さい。↓↓

 

住民票の除票が取れないだけで結構大がかりな作業になりますので、ご親族に相続が発生した場合は、相続登記に向けて戸籍書類、住民票の除票等の手配を早めに行うことが大切です。

今回はここまでです。最後までお読みいただきありがとうございました。

ではまた(^o^


スポンサーリンク

コメント

タイトルとURLをコピーしました