みなさん、こんにちは。
司法書士・行政書士の松崎充知生(まつさき)です。
産経新聞を見ていると、こんな記事がありました。
会社設立をする際、指定暴力団の総裁が会社の発起人であるにも関わらず、その事実を隠して設立登記を申請をした事例ですね。
登記申請をする際、虚偽の内容を記載した書面を法務局に提出すると、公正証書原本不実記載等罪が成立し、逮捕されることがあります。
(公正証書原本不実記載等)
刑法 第157条 公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2 公務員に対し虚偽の申立てをして、免状、鑑札又は旅券に不実の記載をさせた者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
3 前二項の罪の未遂は、罰する。
e-Gov法令検索 より引用
会社の設立では用意すべき書類が多く、登記申請では特に注意が必要です。
株式会社を設立するには、これから設立する会社の定款を作成し公証役場の公証人に認証してもらい、その認証済みの定款を添付して本店を管轄する法務局に設立登記の申請を行います。
公証役場に持参するものは、
- 定款
- 発起人の本人確認書類のコピー
- 発起人の印鑑証明書(発行から3ヶ月以内)
- 実質的支配者となるべき者の申告書
- 空状態のCD-R1枚
- 定款認証用手数料
がありますが、持参した当日に認証ができないといったことがないように、あらかじめ「定款」と「実質的支配者となるべき者の申告書」のデータを公証役場にメールで送付して確認してもらいます。
このように登記申請における添付書面以外にも用意するべき書類が出てきます。
実質的支配者となるべき者の申告書の書式は以下の通りです。日本公証人連合会のホームページからでもダウンロードができます。↓↓
実質的支配者となるべき者の申告書は、平成30年11月30日、公証人施行規則の改正より、制度化されたもので、会社成立の時に実質的支配者(事業経営の決定権を持つ個人)が、その氏名、住居及び生年月日等と、その者が暴力団員等に該当するか否かを公証人に申告する書類です。
実質的支配者は以下の者です。
(①がいない場合)②25%を超える株式を保有する個人
(①②がいない場合)③事業活動に支配的な影響力を有する個人
(①②③がいない場合)④代表取締役
申告された実質的支配者が暴力団員に該当する場合には、公証人に必要な説明をすることになりますが、会社設立に違法性があると認められる場合には、公証人は定款を認証してくれません。
本件事例では、指定暴力団総裁の氏名を定款や実質的支配者となるべき者の申告書に記載すると公証人がそもそも定款の認証を認めず、その結果、会社設立登記もできなくなる為、別の者を利用して定款認証を進めたことが推察されます。
こういった登記申請によって公正証書原本不実記載等罪を構成する行為は、当時登記申請が通った時期よりも、他の事情から遡って後から発覚することが多いですね。
登記は正確な情報を公示していく役割があり、その内容を見て個々人が取引がしていく訳ですから申請する方は実態に合った内容になっているか登記申請前に改めて確認し、虚偽の登記申請は犯罪行為になりうることは認識しておくべきでしょう。
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