定款認証手数料の引き下げ【2024年~】と法人口座開設

商業登記

みなさん、こんにちは。
司法書士・行政書士の松崎充知生(まつさき)です。

 

最近、司法書士の同期と以下の記事の話題で共有する機会がありました。

定款認証の手数料1万5000円に 政府、起業支援で減額 - 日本経済新聞
政府の規制改革推進会議は、株式会社の設立に必要な公証人の定款認証制度を見直す。最低手数料を現行の3万円から半額程度まで引き下げる方向だ。河野太郎規制改革相と小泉龍司法相が合意し、2024年度中に措置する。スタートアップ支援の一環で月末にもまとめる最終答申に盛り込む。株式会社をつくるには、会社の目的や組織、運営に関するル...

法務省は、株式会社設立に必要な公証人の定款認証手数料を見直し、2024年度中に最低額である「3万円から1万5000円」まで引き下げる方向で調整しているようです。

この変更により、資本金100万円未満で設立を予定している株式会社の定款認証手数料が1万5000円になる見込みです。

公証人に支払う定款認証手数料は2022年以前は一律5万円とされていましたが、2022年1月1日から資本金の額に応じて以下のように引き下げが行われたばかりです。

  • 資本金100万円未満の場合:3万円
  • 資本金100万円以上300万円未満の場合:4万円
  • その他の場合:5万円

今回の定款認証手数料の見直しは、スタートアップ支援の一環であり、一見すると今後起業しやすくなるような効果がありそうです。しかし、これには問題点が出てきそうです。

それは法人口座の開設に関する問題です。

現行の会社法では、資本金は自由に設定可能で、資本金1円でも会社設立登記は可能です。

しかし、会社設立後に金融機関で法人口座を開設できるかは別の問題となってきます。
一般論として、口座開設に必要な資本金は「100万円以上」が目安です。

資本金が低すぎると、会社の実態として存在しているか疑わしいとして、法人口座の開設を断られることがあり、個人名義で口座開設するよりもハードルが上がります。金融機関は口座開設を断る際、「総合的な判断」という曖昧な理由を提示することが多いです。

法人口座はこれまでもマネーロンダリングとして悪用するケースが多く、その分、金融機関も慎重に審査するようになっています。

三菱UFJ銀行やみずほ銀行などのメガバンクの口座開設は審査が厳しく、ネット銀行等の審査は比較的緩いとされていますが、それでも事業計画書等の書類を求められたり、一定の制限もあります。

ネット銀行の一つでもある楽天銀行は法人口座開設にあたり、会社の連絡先は固定電話や050のIP電話をあらかじめ開設しておく必要があり、携帯電話で審査をすることができません。

GMOあおぞらネット銀行は口座開設の審査も早いですが、海外送金の受取りができない為、外国企業を顧客にする事業の会社や外国人が日本で起業する場合は不便かもしれません。

最近では会社設立件数が増加していますが、自分で会社設立登記まではしてみたものの、銀行口座の開設が中々進まないという相談もいただくことがあります。中には「金融機関で法人口座を断られるので、資本金を増やして再度口座開設を試みたい」という相談もあります。

しかし、会社設立後に資本金の額を増やす(増資)にも問題点がでてきます。
増資の際、法務局に募集株式の発行の登記申請をすることになりますが、これには「払込があったことを証する書面」を提出します。株式申込人の払込みはその株式会社名義の口座で行う必要があります。つまり、法人口座を開設するために増資をするのに、法務局から株式会社名義の口座に振り込まれたことの証明を求められる為、鶏が先か卵が先かというジレンマに陥ります。
「会社設立前」の段階では、株式会社がまだ存在していないという事情から代表取締役個人口座への払込みができる等の特例措置がありましたが、「会社設立後」に増資する場合はそのような特例措置がありません。(過去に法務局に対して、代表取締役個人名義の口座に払込みをしたことを「払込があったことを証する書面」として募集株式の発行の登記に使えるか相談票を出したことがありましたが、やはり認められませんでした。)

こうなると希望する金融機関でなくても、何とかしてどこかの金融機関で法人口座を開設していくしかありません。起業時の資本金設定は慎重に行う必要があります。

登記実務をしている司法書士の中には、定款認証手数料よりも会社設立登記に必要な登録免許税(15万円)を見直すべきとする声も出てきていますね。株式会社の設立登記には最低でも15万円、合同会社の設立登記には6万円の登録免許税が発生します。起業する方にとってはこの点もネックに感じているかもしれません。

起業準備の段階で、金融機関との相談や資本金の適正な設定を行い、スムーズな会社運営を目指しましょう。

今回はここまでです。最後までお読みいただきましてありがとうございました。
それではまた。

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